LLMの仕組み

ChatGPT などの中身が、何をどう処理して“それっぽい答え”を返しているのか。実際の中身は、言葉を数字(ベクトル)に変え、確率を計算する数学的な処理

2026年7月時点
第 1 部 LLMの基礎 ― まず全体像 LLMとは何か。世の中で使われている代表的なモデルと、その使い方。

1-1LLMとは

LLM(大規模言語モデル、Large Language Model)は、大量の文章で学習し、次に来る語を予測して文章を作るAI。ChatGPT・Claude・Gemini といったチャットAIの“中身(エンジン)”がこれ。

1-2代表的なLLM

ChatGPT・Claude・Gemini は「サービス(製品)」の名前で、中で動く「モデル(本体)」は別にある(GPT-5.5、Claude Opus/Sonnet、Gemini 3 など)。オープン勢(Llama 等)は製品名=モデル名で、決まった窓口はなく自分で動かす。

モデル(本体)提供元オープン特徴
GPT-5.5 系(ChatGPT)OpenAI×汎用型。最も普及し、周辺サービスが豊富
Claude Opus・Sonnet(Claude)Anthropic×長文・コーディング/エージェントに強い
Gemini 3 系(Gemini)Google×マルチモーダルと Google 連携が強い
Llama 4Metaオープンの先駆け。派生・日本語モデルも多い
Qwen3Alibaba多言語対応。極小〜大型までサイズが豊富
DeepSeekDeepSeek推論(じっくり考える)に強く、低コストで話題
Mistral 3Mistral AI(仏)欧州発。ノートPC級の小型から大型まで
GemmaGoogleGemini の技術による軽量オープン版
PhiMicrosoft小型ながら高い推論力。普通のPCで動く

( )内はサービス名。○=重みが公開(ダウンロードしてローカルで動かせる)。※Llama は重み公開だが利用に制限あり。バージョンは2026年7月時点で変わりやすい。

モデルの使い方(インターフェース)

使い方どんなもの
公式アプリ・WebChatGPT/Claude.ai/Gemini提供元の窓口で直接チャット(クローズド)
API各社の APIプログラムから呼び出し、自分のアプリに組み込む
ローカル実行ツールOllama/LM Studio/llama.cppオープンモデルを自分のPCで動かす
ポイント 世の中の多くのアプリ・サービスは、これらのモデルをAPI で呼び出してその上に作られている(例:文書作成の補助、社内チャットボット、コード補助、検索・要約ツールなど)。一般にはそれ自体が「AI」だと思われがちだが、裏では GPT・Claude・Gemini などのモデルが動いている。
クローズド クラウド重み非公開 アプリ/ API 提供元のサーバで動く オープン+ローカル 重みファイル公開・DL可 自分のPCOllama等 手元(ローカル)で動く
クローズド=提供元のクラウドで動く/オープン=重みを持ち帰り手元のPCで動かせる。
第 2 部 使うとき ― 入力から答えを作る(推論) 重みは固定。言葉をベクトルにして、次の語を1つずつ選んでいく。プロンプトが効く理由もここ。

2-1何をしているのか ― 「次の語あて」の連続

LLMがやっていることは、突き詰めると「次の一語あて」の繰り返し

意味の空間(イメージ・2Dに簡略化/実際は数百〜数千次元)/近い=使われ方が似ている 熱い 冷たい 正反対でも近い(同じ文脈) 大きい 小さい 正反対でも近い バナナ 無関係→遠い
ベクトルは「使われ方」を捉える。意味が逆でも文脈が同じなら近く、無関係なら遠い。
GPTに「日本の首都は」と渡すと ―― ①トークンに分解:日本|の|首都|は / ②網目を通して次トークンの確率を計算:東京 92%/大阪 2%/京都 1%… / ③「東京」を選び末尾に足す →「日本の首都は東京」 / ④その全文でまた予測 →「です」→「日本の首都は東京です」 / ⑤文末と判断するまで1トークンずつ繰り返す。
プロンプト「日本の首都は」 トークン化:日本|の|首都|は ニューラルネットワーク(重みの網目) 次トークンの確率 東京92% 「東京」を選ぶ → 末尾に追加 出力「日本の首都は東京です」 1トークンずつ繰り返す
「日本の首都は」を渡したときの流れ。1トークンずつ予測して末尾に足すループで文章になる。
イメージ 超高精度の予測変換/連想ゲーム。「意味を理解して書く」より「次に最も自然な語を延々と当て続ける」。

2-2その計算をするもの ― ニューラルネットワーク(重みのついた網目)

「次の語の確率」を計算しているのがニューラルネットワーク。ここが一番の土台。

入力…層を重ねる…出力 重み
ノード(丸)を結ぶ線が「重み」。太いほど強い。現行モデルではこの重みが数十億〜兆本
イメージ ノード=0〜1のメーターを持つ電球、重み=各配線のボリュームつまみ、偏り=光り出すためのハードル。学習で全つまみを調整し終えると、以後この設定は固定される。使うときは、この固定した網目に言葉を通すだけ。

補足:「重み」には2種類。モデルの重み(学習後は固定)と、次章のAttentionの重み(入力ごとにその場で計算=プロンプトで変わる)。

2-3なぜ文脈を捉えられるか ― Transformer と Attention

2017年に登場した Transformer が、いまのLLMの土台。その核が Attention(注意)

ふわふわ 青い 生き物向きを更新 “生き物”が“ふわふわ”“青い”に注目して、自分のベクトルの向きを寄せる
Attention=関連の強い語から情報をもらい、文脈に応じてベクトルの向き(意味)を更新する。
イメージ 大事な語に引く蛍光ペン。文中の語どうしを関連線で結び、関係の強い相手から意味をもらってベクトルの向きを寄せる。

2-4一度に読める量には上限がある ― コンテキスト(文脈窓)

LLMが一度に頭へ入れておける量には上限がある。これがコンテキスト(文脈窓)で、トークン数で測る。

コンテキスト(文脈窓)=一度に頭へ置ける量(トークン数) 会話・資料(手がかり) 空き 上限 はみ出す分 =忘れる この幅までしか保持できない(2026年:1Mトークン級)
コンテキスト=作業机の広さ。2026年は1Mトークン級が主流。超えた分は保持できない。

2-5だからプロンプトが効く ― ベクトルの向きを狙う

仕組みを踏まえると、実用の芯はこうなる ―― 重みは固定。動かせるのは入力(プロンプト・コンテキスト)だけ。入力の言葉は内部でベクトルに変わり、Attentionで互いの向きを動かし合う(2-3)。プロンプトを工夫するとは、この内部のベクトルの向きを、狙った意味の方向へ寄せること。向きが寄れば、次の語あての確率もそちらへ寄る。

例:長い議事録を要約させる

→ プロンプトとは、①どの意味の方向へ向けるか + ②どんな出力の形に着地させるかを、モデルに渡すこと。

なぜ思った通りにならないのか(よくある原因)

イメージ 内部のベクトルは向きを持った矢印の束。プロンプトはその向きを、出したい意味の方へ傾ける操作。何も指定しないと矢印は平均的な向き(無難な答え)を指す。向ける先(何に注目させるか)と着地点(出力の形)の両方を渡すほど、狙いに近づく。
第 3 部 作るとき ― 学習で重みを決める 第2部(使うとき)とは別のフェーズ。ここでだけ「坂を下って」重みを調整する。使い終えると重みは凍結。

3-1どうやって賢くなるか ― 学習=重みの調整(勾配で坂を下る)

第2部(使うとき)は重みが固定された話だった。その重みそのものをどう決めるかが学習。学習とは、網目の重みを少しずつ調整して、予測を正解に近づけること

誤差の地形(重みの組み合わせで高さ=誤差) いまの重み 底=誤差が最小
勾配降下=誤差のすり鉢(地形)を、足元の傾きを頼りに底へ下る。1点=モデル1台ぶんの重み設定、高さ=誤差。
イメージ 学習は霧の中の山下り。足元の傾き(勾配)だけを頼りに、谷(誤差の小さい所)へ下りていく。 ※ この「坂」は学習だけの話(使うとき=第2部には坂はない)。坂の1点=モデル1台ぶんの重み設定・高さ=誤差で、言葉の意味を置くベクトルの空間(1点=言葉1個)とは別物。

学習の3段階(2026年時点)

1
事前学習 ― 大量テキストで「次の語あて」、知識を重みに刻む
2
指示調整(SFT) ― 質問に答える型を教える
3
人間のフィードバックで調整(RLHF) ― 役立つ・安全な受け答えへ磨く
イメージ 新入社員の育成。事前学習=大量の本で常識と言葉を覚える/SFT=模範解答つき想定問答で答える型を教える/RLHF=先輩が答案に○×して受け答えを磨く。
第 4 部 クセと限界 ― なぜ間違い・偏りが出るか これまでの仕組み(次の語あて・トークン・学習)から、出力に必ず現れる性質。

4-1なぜ“それっぽい”のに間違えるか ― ハルシネーション

LLMは、事実を調べて書いているのではなく、確率的にもっともらしい語を選び続けているだけ。だから、知らないことも自然な言葉で埋めてしまう(ハルシネーション=もっともらしい嘘)。

イメージ 知ったかぶりの即答者。知らなくても、それっぽく自信満々に答えるのが“得”だと学んでしまった相手。

4-2AIの“クセ” ― 文章とふるまいに出る傾向

同じ仕組みから、出力にはいつも似たクセが出る。多くは「最も無難で平均的な次の語」を選ぶ性質(2-1)、トークン単位でしか見ていないこと(2-1)、人間の評価で磨かれた受け答え(3-1の③・RLHF)から説明できる。

文章のクセ(書き方に出る)

ふるまい・能力のクセ(苦手なこと)

補足 これらは不具合ではなく仕組み上の初期値。文章のクセはプロンプトで抑えられる(例「褒めない・前置きなし」「装飾や箇条書きは使わない」)。能力のクセは道具で補うのが確実 ― 計算や文字数は計算ツール/コード実行、最新情報はWeb検索、正確さは出典を必ず確認。

参考・出典(2026年7月時点)

※ モデルのバージョン・パラメータ数・文脈長は変化が速く、非公開・推定も多い。配布前に再確認。